第312章

丹羽邦義の言うとおりだ。たいていの人間は、どれだけ必死にもがいたところで、結局は「普通」になれるかどうか――それが限界だったりする。

丹羽邦義だって例外じゃない。丹羽家の御曹司という肩書きを失えば、ただの一人の男だ。

丹羽家を追い出されてからというもの、彼は現場でレンガ運びまでやった。丹羽元祐とその息子とで金をかき集め、ようやく加盟店として小さなケーキ屋を開いたらしい。

まだ三十になったばかりなのに、こめかみには白いものが混じっている。肌もずいぶん荒れて、かつての甘やかされた艶なんて、もうどこにもなかった。

「修士まで出てるんでしょ。適当に就職したって、店やるよりマシじゃない?」

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